まきくま山

まきくま山の備忘録。 山歩き・美味しいもの・愉快な仲間


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12:00 劔沢のテント場からもう一度劔を振り返る。
山頂ではあんなに雲がわいていたのに、降りてきたらまだまだゴキゲンな青空だ。
こんな一日をプレゼントしてくれた山のカミサマにほんとうに感謝しなくっちゃ。

シュラフはもちろん昨日着ていたものもザックもなにもかも広げてお日様にあてる。
行動食でお昼ごはんを済ませる間に、荷物はすっかり乾いていた。
さて。荷物をまとめて出発だ。

14:00 劔沢をあとにしてゆっくりゆっくり劔御前小屋まで登る。
大きな谷の則面をなめるようにあがっていくと、そこかしこにトリカブトやリンドウといった秋色の花が風にゆれれていた。
何度も振り返って岩の劔を確かめる。
なぜかガスがどんどん沸いてきて、実際に離れていく距離の二乗分くらい、劔がどんどん遠ざかる。
劔御前の小屋についたときはとうとうなにも見えなくなった。
でも、少しも残念な気持ちはなかった。
あの緊張から早く遠ざかりたい。そんな気持ちがあったのかもしれない。

尾根を越えて向こう側、雷鳥沢へは、かなりの急坂をごんごん下る。
登ってくる人たちは、室堂までの長旅ですでに体力を消耗しているのだろう。この急登に、みな苦労していた。

15:40 雷鳥沢到着
立山三山に囲まれた明るく広い谷。劔に威嚇されているような劔沢とちがって、ここは、立山の懐に抱かれているような安らかな印象を受ける。なんて優しく、なんて伸びやかな風景なんだろう。

すーっとまっすぐに伸びた道路をたどって、受付をすませる。
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ささっと設営を終えて着替えを持って温泉に行く。
2軒ある温泉ホテルのうち、ちょっとだけ近くにみえたロッジ立山連峰へ。
ザックを背負っていたときには思わなかったのに、温泉セットひとつで歩き出したら、こんなに疲れてたのかな? というほどふらふらしてる。温泉までの坂がつらい。

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これが目当てで今日の幕営地をここまで移したのだ。がんばれ! まきくま。

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ふぅ~
山が見えるよ。いい気持ち。

独り占めの温泉のあと、フロントにあった生ビールの張り紙に魅かれて食堂に座り込む。
なにかつまみになるものをと聞いてみたが宿泊客の夕食の支度中でできないそうだ。
仕方ないのですきっ腹に生ビール。

痛快 そのものなんだけど。。。。。

テントまでの道のりの長いこと!

生1杯でふらふらのよっぱらいになってしまった。うふふ。

それでも帰りに缶ビールを買うことを忘れなかった。やれやれ。

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乾杯! わたしの剣岳に!

なんで、こんなにうれしいんだろう。
山に登る喜びってなんだろう。
たいして美味しくもないカレーを食べながらひとりつらつら考える。
なんで、劔に登りたかったのか。
なんで、劔に登ったことがそんなにうれしいのか。
もちろんこたえは出てこない。
だけど、そんなことを考えるうちにひとつの結論が出ていた。

明日は山を降りよう。
大日小屋にとまって、大日・奥大日と縦走する予定だったのだが、このまま降りることにしよう。
もうお腹いっぱい、十分満足した、というのと同時に、もう、劔は見なくていい。
と思ったのだ。


9月2日
雷鳥沢のテン場から立山の大きなカールをつつーっと横切って、再び一の越に登り返す。

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なんと広い谷。
谷底を横切るだけでも小一時間かかる。夏の初めはここ一面に花が咲いていたに違いない。

潅木のトンネルをかきわけるように進んだり、わかりにくいガレた道を登る。昭文社の地図に迷マークがあるとおり、すこしわかりにくいところがあるが、なにせ100パーセントの快晴! 進むべき尾根がすっきりと見えているので不安はない。

雷鳥が出てきてなにか言っている。
そういえばおととい、すぐそこの玉殿の岩屋ではおこじょと逢ったな。
こんなところ登る人はほかにいない。

実は、一ノ越からそのまま黒部ダムまで歩いて降りようという魂胆だ。
最初は東一ノ越までの尾根のトラバースルート。ほぼ平坦な道で、左手にザラ峠、さらに薬師へとつながる美しい尾根を望めるすばらしい爽快な道だ。
ロープウエイの大観峰の駅が見えるところで左に折れて、ダムに向かって急降下するのだが、あまりに道が崩れているので不安になり、ひとり右往左往する。雷殿への道が通行止めになっているのだが、その掲示がどこをさしているのかわかりにくく、(私のへんな思い込みがいけないんですけどね)、ハイマツの中、尾根を突き進んでみだり、すこし降りてみたり、小一時間を無駄にした。
そこへ、このルート二人目のすれ違い。黒部ダムから登ってきた酔狂な単独男性がいて救われた。

しかし、そこからの下りは北アルプスのメジャーな山につながっているとは到底思えないひどい道だ。草むらに覆われ、沢を渡るところでは完全に崩れている。
なにより、人がぜんぜんいない。この大きな谷を歩いている人間はどう考えても私ひとり。だれがどう考えてもクマのほうが多そうだ。
登山道の真ん中には大きな大きなカエルがどっかりと居座ったまま動かない。そんなことが2度3度。
勇気を出してキスしたら王子様にかわりそうなくらい大きいカエルなのだ。
こんなときに限ってくま鈴を持っていないし。 もお。
思いついて、雄山神社でいただいた鈴のついたお札を出してザックにくくりつける。
一ノ越からたっぷり3時間かかってロープウエイとケーブルの乗り継ぎ地点、黒部平まで降りたときには、迷うことなくケーブルカーのチケットを買った。

波のように押し寄せる観光客に混じって黒部ダムからトロリーバスに乗って扇沢へ。
バスで温泉まで行って汗を流し、信濃大町に出てあずさに乗り込んだ。

*********************************

さて、映画「点の記」です。
原作は、立山の山岳信仰におけるタブーを犯そうとする測量という国家事業、軍の幹部と現場技術者の軋轢、スポーツ登山の日本山岳会と測量を目的とする登山の陸軍との争い、さまざまなファクターをからませながら、主人公が劔登頂という大きな目的をどう達成するかをドラマチックに描いたものです。
映画では、周辺のさまざまなファクターを少しずつはしょってなんとか2時間にまとめています。
それだけに、原作を読んでいない人にはわかりにくいところもあったはず。
いっぽうで、山に向かっていく登場人物の心の動きがよりクローズアップされていたようにも思います。

三角点設置という明確な目的をもって山に登る男は、山に登るために登る男の気持ちを理解できません。
作者の新田次郎は気象庁に勤めていた気象学者。富士山気象レーダーの建設にもあたっていたことは有名です。彼も、職務を負って山に登っていました。よって、このあたり、かなり感情移入がありそうです。
しかし、さまざまな困難に遭遇するうちに、彼は「なぜ地図を作るのだろう」と自分のよって立つところである、目的そのものについて自分に問いかけだすのです。
「人がどう評価しようとも、何をしたかではなく、何のためにそれをしたかが大事です」
先輩の測量官からかけられた言葉に勇気を与えられ再び山に向かう主人公。

いっぽうで、主人公を劔に導こうとするガイドの長次郎は、こんな風にいいます。
「ただただ山に登りたいという人の手助けをするのが自分の喜びなのです」と。

最終的に何が正解なのかは、もちろん見るひとそれぞれが決めることです。
で、私の勝手な解釈です。
私は、映画の登頂のシーンを見たとき、そこに至るいろいろがどうであれ、山に登るというそのものが、なにか大きな感動を生むことなのではないか、と思いました。
こんなことを言ってはなんですが、たぶんあの瞬間、ほんの1瞬にすぎないとしても、彼らは測量のことを忘れたのではないか。
そのくらい、その景色は大きく、美しく、そこにいる人びとの顔はまさに恍惚としていました。

そして、山は、その大きな感動のなかで、自分がそこにいたるまでに何をしてきたのか、を問うてくるものなのではないか。

非常に勝手な解釈ですが、そんな風に思うと、山岳会も、長次郎も、柴崎も、そしてこの私も、山に登ることにおいて同じラインにいるように思えたのです。
あまりに個人的な解釈ですが、映画「点の記」に、個人的な思いを重ねすぎて号泣してしまった私にとっては、これが正解。
そして、あのとき、いったいどんな風に思ったのか、もう一度たどってみたくて、ちゃんと覚えておきたくて、一年遅れのレポを書きました。

あのとき、どうしても劔のことを誰かと話したくて、劔に登ったことのあるご近所の山友を呼び出して、ザック持ったまんま呑みに行ったことを思い出します。いま、レポ書いているのもそれとおんなじ気持ちなんだろうなあ。

それしにしても、あの時はよく呑んだ。。。
ジョッキ9杯! 

劔はそれだけ大きな山でした。

ぶらぼ~~。
もうひとつの「点の記」読んだ気分ですよ。
やはりあの道を降りたのですね。
私も以前チャレンジしようとしたけど、隊長に止められちゃってそれ以来気になっている道でした。

お疲れ様でした。
2009/07/19(日) 21:53:41 | |木曽駒 #6wH.DH8I[ 編集]
お疲れさまでした。
まきくまさんの”劔岳”がやっと終わったといったところでしょうか?
単独で行くと、感動を誰かに話したくなりますよね~・・blogとかHPとか居酒屋さんとか?・・ん?居酒屋さんちゃうちゃう!山友さんとかね~
きっと、その時にはたくさん話した為に今頃になっちゃったのかも??
引き続き、未公開のレポもヨロシュウ~!
私も絶対に行くつもりです。劔岳・・バンザイ!
2009/07/20(月) 08:44:21 | |yzm #yIrPwv/E[ 編集]
イチコメ逃した(笑)
いい記事だー。昨日の晩、疲労困憊(精神的にね(笑))で部屋からぬけだして、温泉はいりなおして、ひとりビール(おやぢ!)してたときに読んでたんだー。じつは。
でも、なんてコメントしたらいいか、言葉がでてこなくてねぇ。いまでもわからないから、とりあえず近いうちに会おっ(笑)

あの映画、わたしも、号泣...までいかなくとも、涙したひとりでやんした。
先に本よんでたせいかな、わたしにはちゃんと伝わってきたんだよなー
また見たいくらいです。

ほんと、はやく会おっ(笑)
2009/07/20(月) 18:56:56 | |まゆた@はやて #LkZag.iM[ 編集]

この記事いいね~!
オイラは剣に登ってないから、本当の意味でのまきくまさんが味わった感動は解らないのだろうけど、まきくまさんが感動した事は伝わってきたですよ。
過去の山行をこれほどの臨場感で書けるって、よほど心に残ってる証ですね。
2009/07/20(月) 22:02:12 | |食う寝るさんだ~す #EBUSheBA[ 編集]
実は…
剣岳にも憧れてるけれど
それ以上に気になってるのが雷鳥沢。(笑)
あそこで天泊してみたい!
温泉入って、ビール飲みたい!!(笑)
いつかのその日を楽しみにしてます!

…やっぱり、剱岳登ってから飲んだ方が
美味しいんだろうなぁ~、ビール。(^^;)
2009/07/21(火) 19:22:27 | |akemi #vXeIqmFk[ 編集]

剱完結ですか~
でかザックのまま焼き鳥屋に直行、そして、ひたすら、生、生、生。。。
今、ちょーいい気分なんだろうなぁと思いましたよ^^

単独ゆえにいろいろ思うことがストレートに入ってくるんでしょうね。私もこんな気分になれる山行したいなぁ。
2009/07/22(水) 12:48:59 | |たここ #USldnCAg[ 編集]

駒ちゃん
>もうひとつの「点の記」読んだ気分ですよ。
あはは、そんなあ。ありがとうございます。
>やはりあの道を降りたのですね。
>私も以前チャレンジしようとしたけど、隊長に止められちゃって
はい、行かないで正解です。でも、また行っちゃうかもな道ですなあ。
あのね。黒部ダムから立山に登って見たい。。。
って、ちょっと思いました。
あそこ登って雷鳥平でテント! 
ステキじゃないですか?

yzmさん
>まきくまさんの”劔岳”がやっと終わったといったところでしょうか?
うーん、確かに書いてよかった~。
書いてない山って、終わってない気がしますよね。
これでずーっと、思い出せて、うれしいな。
>引き続き、未公開のレポもヨロシュウ~!
えと、未公開というか未着手ですねえ。
穂高、谷川縦走、白山、秩父縦走、あ、針の木もあった~。もう、書いてなさすぎ!
>私も絶対に行くつもりです。劔岳・・バンザイ!
ぜひぜひ。劔はそれだけのことはある山だと、おもいますです。

まゆたたらん
おかえりんぼ。おつかれさんでやんした。
雨酷かったみたいだけど、美味しいものは食べたかな?
報告まってるよん。って、あれか、山無理だったなら報告にならないかなあ。

>とりあえず近いうちに会おっ(笑)
そーだそーだ
あおう会おう!
>あの映画、わたしも、号泣...までいかなくとも、涙したひとりでやんした。
だよね。
やっぱ、会って話さなきゃだね。
>ほんと、はやく会おっ(笑)
うんうん。
コメント毎回ありがとねー。
2009/07/23(木) 02:01:17 | |まきくま #E5Upi6Fk[ 編集]

おおっ 琴三喜勝った~!
明日、朝青龍か。。。ガンバレ朝青!

食う寝るさん
>まきくまさんが感動した事は伝わってきたですよ。
あはは、非常に個人的な感動ですけどねー。
でも、食う寝るさんもきっと感動するよ。だって、あの山かっこよくない?
>過去の山行をこれほどの臨場感で書けるって、よほど心に残ってる証ですね。
あー、えー、うー、
地図見つつ必死で書いてるんですよー。
だから道のことはとんと。。。
そのときに思ったこととか、考えたことは覚えているんですよね。
で、地図見て振り返るといろりろまたかんがえたりして、それが面白いんだよね。

akemiさん
>気になってるのが雷鳥沢。(笑)
>あそこで天泊してみたい!
>温泉入って、ビール飲みたい!!(笑)
akemiさんは、そこですかー。
あのね、ほんとにね、

さいこーーーー

なテン場でした。
盛りのときはもっと混んでてあれなのかも、ですが、私のときはすいてたしねえ。とってもよかったですよ。温泉があるって、すごくないですか?
>いつかのその日を楽しみにしてます!
いつかなんていわず、ここは交通機関もいろいろ。バスなら一晩寝てる間に着いちゃうし、とっても便利いいですよ。雷鳥沢を基地にして、見えるピークに順番に登るってのも、オツですよ。

たここさん
>でかザックのまま焼き鳥屋に直行、そして、ひたすら、生、生、生。。。
あのときは、ほんとへんだったよね。つきあってくれてありがとう。
>今、ちょーいい気分なんだろうなぁと思いましたよ^^
あはは、たけさんは別にいい気分じゃなかったのに、よくあれだけ呑めたもんだね。
>単独ゆえにいろいろ思うことがストレートに入ってくるんでしょうね。
結果的にそうなのかもね。単独だといろいろ考えたりしてセンサーは敏感になってるのかもですね。でも、私の場合、ちょっとぴりぴりしたところがあって、あんまし待ったり気分になれないのが欠点かな。
2009/07/23(木) 02:11:43 | |まきくま@大相撲ダイジェスト #49yLIUkw[ 編集]
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