まきくま山

まきくま山の備忘録。 山歩き・美味しいもの・愉快な仲間


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9月1日

チリンチリン、からんからん、りんりんりん

真っ暗な中、次々と劔に向かって歩き出す人の鈴で目が覚める。
空はダークブルー。

晴れてる。

でも、まだ岩場はぬれているはず。いまはまだ私には無理。
行かない言い訳を探しているのか、行くタイミングをはかっているのか、だんだんわからなくなるくらいに、気持ちがゆれる。

で、乾くのは何時だろう。
やっぱり、行きたいよ。

5:30 もうヘッデンはいらない。
    テントの周りの地面も乾いてきた。もしかして、これは、すごいチャンスなのか?
    続々と出発する登山者にあおられるように、
    アタックザックに水と行動食を入れて出発した。

IMG_4301t.jpg
昨日の雲が、今日の太陽にどんどん追いやられていく

5:50 劔山荘でおにぎりを食べ、トイレを借りる。
6:00 すっかり明るくなった。
    道も乾いている。 

    うん、いける。空は、すかっと晴れている。
    
    小屋の裏手からいきなり急な坂を登って行く。

6:20 あっけなく一服劔へ。

IMG_4306.jpg
振り返ると、昨日テントを張った劔沢が思ったより大きなスケールで見えた。
大きな谷を抱える山はそれだけ大きいのだ。これからの道にわくわくする。

少し下って武蔵のコルへ。

一服劔を振り返る。
IMG_4307.jpg
岩ゴロの急坂を、石を落とさぬように注意しながら登ったり、下ったり。
ずっとテン泊装備で歩いているせいか、空身の行動は驚くほど身が軽い。

7:10 前劔
IMG_4311.jpg
劔本峰の壁が見えてきた。

IMG_4312.jpg
振り返ると、こりゃまたすごい景色だ。
すごい景色だけど、景色は目の上を滑って頭にも心にも届かない。
地図を出して山名を同定する気にもなれない。
こんなところにひとりで来てしまった自分に興奮しているのだろうか。

それにしても、なんでこんなところにひとりで来てしまったんだろう。
なんてことを考えるすきも余裕もなく、ただただ前に進む。

前劔から山頂への道。
IMG_4342.jpg
写真は下山時に撮ったもの。このあたり、ルートの詳細な記憶はほとんどない。。。
覚えているのは、次々に大きな岩や鎖がでてきたこと。
鎖をたよりに大きな岩をへつったり、岩棚をたどったり、スラブをずるずる降りたり。

50台半ばかと見えるいかにもベテランご夫婦のあとにつく。当たり前かもしれないけど、自分のほうが身が軽い。なかなか進まない奥さんに少しいらいらするが、向こうは女ひとりとみてか道を譲ろうとはしない。
30台と見える5-6人のグループのあとにつく。はじめて山に登るメンバーもいるらしく、早々に道を譲られる。
いつまにか岩の上り下りにずいぶん慣れてきているようだ。
特に岩の山を選ばなくても、縦走していればそれなりに岩場に遭遇する。それをテン泊装備で越えてきたんだもん。こんな私でも少しは上達もするだろう。
大きな岩の割れ目に沿って降りていくところで、前を行く単独の男性が振り返って私にアドバイスした。腰を下ろして思い切り足を伸ばして下の段に降りればいい、と。でも、その下も切れているのに、もし足がしっかりかからなかったらそのまま落ちていくじゃあないか。身長のない自分は後ろ向きになってしっかり手と足を使って降りなければいけない。自分の安全は自分で確保しなくちゃ、だ。

かと思うと、ガイドにロープで確保されているのに、見た目にも真っ青になって立ち往生している登山者がいる。
クサリ場では待ち時間ができ、上と下で怒号が飛ぶ場面もあった。
百名山であるところの劔岳が、「点の記」のそれとはまったく違う山になっていることはもちろんわかっていた。
そう、だからこそ、こんな私でもここに来ているのだ。
来ているだけで、ほんとうに劔に登る資格があるかどうかはよくわからない。
でも、それにしても、なんだか、これは違う。気がする。
そう、私のなかでできあがっていた神聖にして厳粛、誰も寄せ付けない岩峰・劔と、いま私がこうしている劔はちょっと違っている気がするのだ。

と、行く手に大きな岩峰が垂直に立ちはだかっている。

IMG_4315s_20090712223141.jpg
8:00 有名なカニのタテバイだ。

クサリ場では待ち時間ができる。私の前は30台くらいの男性ふたりと、女性ひとりのグループ。
男性ふたりはもう何度もこのルートにきているらしい。
笑顔で話しかけ、登り方のこつなど聞き出す。女性とふたりで、どきどき感を分け合う。
前を行く人の足の運び、手の運びをみながら、自分のなかでシュミレーションをする。
男性ふたりがなんなく壁の上に上がり、女性が最後の段差で苦労しつつも上に上がった。
さあ、私の番だ。最初の10メートルくらいは順番に手足を動かせばいい。
モンダイの段差にきたところで、やはりもたついてしまった。
なんだか頭が混乱してくる。さっきまでの自信はどこへやら。
と、前の男性が上の段からアドバイスをくれた。
強引にひとつ上のピンに足をのせてカラダをひきあげて。。。。。
と、クリアだ!
女性とハイタッチして一緒に喜ぶ。

さあ、あと少し。 危険な岩場はない。一歩、一歩、進めば確実に頂上が近づいてくる。

IMG_4316.jpg
8:40 劔岳 登頂

あんなに恋していた山に、ぜったい無理だと思っていた山なのに。
なぜか登ってみるとあっけない気がした。

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ぎざぎざの岩峰。

IMG_4327.jpg
立山から薬師へと続く北アルプスの峰峰。早くも雲がわいてきた

IMG_4328.jpg
ああ、これは、三角点。。。

カメラを構え、シャッターを押したりしてみるものの、なんだかどうにも落ち着かない。

そう。

岩は登るより降りるほうがムズカシイ。

こんなところでゆっくりしている場合ではない。
雲にまかれる前に、コンディションがいいうちに、早く降りなければ。

写真もそこそに下山を開始した。

続く


去年、まきさんが劔に行ってるとき、自分もソワソワしてたの思い出した(笑)。
ひとりでよくがんばったねー。わたしはひとりじゃなかったから、こんなドキドキ感はなかったけれど、まきさんの文章読んでいて、ひとりだったら・・・と考えてました。きっと不安でいっぱいだっただろうなぁ。
ここ、稜線歩いてるときから景色すごいよね。映画みたせいもあるし、またあの景色みたくなってきちゃった。でも、さらに人多いのかな(汗)
2009/07/14(火) 06:24:05 | |まゆ太 #Uc1kfBME[ 編集]

帰ってきてみたら、闇に葬り去られたと思ってた剣のレポがはじまっててびっくり。

>あんなに恋していた山に、ぜったい無理だと思っていた山なのに。
>なぜか登ってみるとあっけない気がした。

なんかあるお話を思い出した。
ある男性がある女性に恋をして、高嶺の花だと思ってたらある晩声をかけられて…って話。たぶん知ってるでしょう。
2009/07/14(火) 06:44:31 | |輝子 #juZz/cEU[ 編集]

私たちのときも、お天気が悪くて、待ってるときのじりじり感、思い出したです~
頭をからっぽにして登る感じわかるなあ、あの山は無心になるよね。
一人ならではの感性、一人ならではのどきどき感、伝わってきていいレポですね。
2009/07/14(火) 13:04:43 | |ぜいぜい #aRYHo2sk[ 編集]

剣岳レポ、楽しく読まさせていただきました。
僕が登ったのは04年だったかな?その時の景色、様子を思い出しました。
山頂に着いたときは感動しましたし、
山頂からの展望は変わらなかったと思います。

僕もその時のレポを今年春に書きました。TBして見ます。
2009/07/14(火) 20:44:47 | |へろへろ #-[ 編集]

昨年、計画していて挫折しちまった剱岳。
今年こそはと願って、少しずつテンションを高めているのでまきくまさんの記事、凄い刺激になります。

一年近く前のことなのにとても臨場感溢れるレポ、剣の魅力と感動のお裾分けをたっぷり頂きました。
ご馳走様でした!
2009/07/14(火) 21:25:36 | |小太り親方 #-[ 編集]

あ~、いいね、いいね!
なんか想いの伝わる感じだす。
山に憧れて、そこに向かう気持ちが伝わってきた。
とんがった山には興味のないオイラだけど、初めて山に憧れた穂高連峰を思い出しました。
いつか行く日がくるかな?剣岳
こんなの見ちゃうと、行きたくもあるな~
2009/07/14(火) 22:19:52 | |食う寝るさんだ~す #EBUSheBA[ 編集]

怒涛のあっぷじゃぁぁー
どないしたん?
このままm 穂高うぷまでいくのかぁ?

剱 やっぱいいよね。
山はもちろん 自分の中の気持ちも
他の山にむかうのと何かが違った。
てへっ もう一回自分のレポも読み直して
あの感動に浸ってしまったなり
2009/07/15(水) 07:20:58 | |ロビン #qIFa0De.[ 編集]

まゆぴょん
>去年、まきさんが劔に行ってるとき、自分もソワソワしてたの思い出した(笑)。
あはは。シンパイかけたねえ。
ま、あたしが劔だかんねー。
>ひとりでよくがんばったねー。
はい、がんばりまちた。
って、なんか子どもみたいだな。
まゆぴょんは¥ちゃんがいるだからひとりじゃ行かないと思うよ。ほんとうに信頼できて、いちばん安心して登れる相手がいるのは、ほんとうにいいことだよ。
たぶん、私の場合、このときは、誰かと一緒のほうが不安でういっぱいになったかもね。
>稜線歩いてるときから景色すごいよね。
うーん、そうだったみたいやねえ。写真見てびっくりするわ。映画みたいや(爆)
ほんとにまた行きたいなあ。今年、いっちゃうかもだ。

輝子さん
長旅からお帰りなさい。
鳥海はフランスより遠かったのでは?
>闇に葬り去られたと思ってた剣
いやいや、そんなつもりは。。。
なんかあるお話を思い出した。
>ある男性がある女性に恋をして、高嶺の花だと思ってたらある晩声をかけられて…って話。たぶん知ってるでしょう。
ああ、わたしの知ってるのとてるちんの知ってるのとおんなじかなあ。えと、誰の短編だっけか?

ぜぜさん
>お天気が悪くて、待ってるときのじりじり感、思い出したです~
決断するまで、けっこう重い気分になるよね。
それでぜぜさんたちかなりおそーいアタック開始だったよね。レポすっごくよく覚えてる。なにせ、出かける前に何回も読んじゃったもんね。動画もね。
>頭をからっぽにして登る感じわかるなあ、あの山は無心になるよね。
そうなのかなあ。なんか、そのへんもあんましよく覚えてないのだー。無心だったのかなあ。
>一人ならではの感性、一人ならではのどきどき感、伝わってきていいレポですね。
ありがとー。ま、結局この1人愛がいろいろ禍いしている気がする京子のごろごろ~
2009/07/15(水) 23:06:36 | |まきくま #E5Upi6Fk[ 編集]

へろへろさん
レポ見に行きましたー。
おんなじところで、おんなじ景色とってるんだなあって、面白かったです!
へろへろさんも当日はおひとりだったんですね。でも、私に比べてなんと冷静なこと!
>僕もその時のレポを今年春に書きました。
なんでだろ、後になっても思い出してもステキな山なのかな。
TBありがとうございます。

親方さま
おお! コメントありがとうございます。
>昨年、計画していて挫折しちまった剱岳。
そでしたかー。今年はきっと行けますね!
>一年近く前のことなのにとても臨場感溢れるレポ
ありがとうございます。
でも、そのときに思ったこととか、あった人のこととかはすごくよく覚えているんだけど、ルートのことになるとさっぱり(笑)。地図見て必死に順序間違わないようにって、感じですよ。このときは、ほんとに危険なところではカメラを出すことを自分に禁じていたので、要所要所の写真ないんですよ。
うふ。意外にまじめでしょ? まきくまさんって。
2009/07/15(水) 23:20:36 | |まきくま #E5Upi6Fk[ 編集]

くねるさん
>とんがった山には興味のないオイラだけど、初めて山に憧れた穂高連峰を思い出しました。
おお、食う寝るさんは穂高ですか? もちろん私もあそこは憧れでしたね。自分いはカンケイない山だと思ってましたよ。
>いつか行く日がくるかな?剣岳
どうなんだろ。遠いしねえ。でも、案外そんなに気にしてない山ほどひょんなきっかけでするりと登っちゃったりしてね。

ろび
>怒涛のあっぷじゃぁぁー
>どないしたん?
あはは、これはこの間の週末に書いちゃったんだよ。あんまし長いから分けてうぷしているだけ。
とはいえ、このあとはまだなんだよね。
>このままm 穂高うぷまでいくのかぁ?
おっと、そこにいくかー
>てへっ もう一回自分のレポも読み直して
>あの感動に浸ってしまったなり
そうそう、そのためにブログはあるのだー
今週末の山も感動たっぷりだねー。
2009/07/15(水) 23:27:14 | |まきくま #E5Upi6Fk[ 編集]

うーん、マキクマさんすごいね~!
また一人でツルギですか~!
その体のどこにユウキがあるんでしょうか?
2009/09/07(月) 21:47:09 | |Marty #-[ 編集]

初めまして。
色ーんなブログで剱レポ観てるけど、まきくまさんのレポにはついついひきこまれて、
仕事どころではなくなった(笑。
単独行の孤独感(?)と、それと引き換えにある喜びがバッチリと描き出されて
楽しく拝読させてもらいました。
あー振り返ればオイラも単独で登った山ほど思い出深いんだよなー。

仕事の合間に(笑)またおじゃまさせて頂きます!
2009/12/01(火) 13:07:15 | |sho #-[ 編集]
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2009/07/14(火) 20:43:19 | へろへろの山登り
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